ケーブルの素材で音が変わるってなにそれ怖い……
数万円のケーブルを買う度胸はないんですが、純銀の激安中華ケーブルみたいなものも登場しているので、それぐらいなら買ってもいいかなという気持ちですが、そもそも音と素材の関係が世の中でどう言われているかも知らないので、各社の主張をまとめて、全体的な傾向を見てみました。
ざっとメジャーなケーブルメーカーは見たつもりですが、随時更新していければと思います。
- ケーブルの素材で音が変わるってなにそれ怖い……
- 素材についての基礎知識
- 銅素材について
- 銀素材について
- 金素材について
- 純度一般について
- 芯の数について
- PVC 加工について
- リッツ構造
- FEP加工について
- 補遺:メッキ違い聴き比べセット
- 関連記事
素材についての基礎知識
OFC :銅の純度99.99%以上の無酸素銅(4N)。
PCOCC :古河電気工業が開発した単結晶状高純度無酸素銅。純度99.997%以上の4N銅。既に生産終了。
PCUHD :PCOCC導体の生産終了に伴い、古河電気工業が開発した高純度無酸素銅線。純度99.99%以上の4N銅。
HiFC :日立金属が生産する高機能純銅。純度99.99%以上の4N銅。
6N-OFC :純度99.9999%以上の高純度無酸素銅。
これでだいたいの基本的な用語は出揃っているのではないかと。簡潔な説明もありありがたいことです。OFCについては、基本的で頻出なので、wikipediaにも記事が存在します。
無酸素銅(むさんそどう、OFC:Oxygen-Free Copper)とは、一般的に酸化物を含まない99.96%以上の高純度銅のことを指す。
広くケーブルの導体として使われている純度99.90%(3N)程度のタフピッチ銅と比較すると、より抵抗や歪みが少なく工業的に優れている。
wikipedia末尾には、音質と関係あるか??という問題提起もされています。純度と音の関係について、明言しているメーカーがあるかというと、意外に存在しませんでした。対して、材質については、銀線は~というような言い方が存在したので、それなりに明言しているメーカーが存在します。
が、実際のところ、どの程度真に受けるかは、お預けするという前提で、まずはメーカーの主張を確認してみたいなというのが本記事です。
銅素材について
銅についてはちょっとむずかしいところがあり、高純度OFCみたいな言い方がされてるわけですが、「高純度OFC→○○」というふうな説明があったとして、「純度が高いから○○」なのか「銅だから○○」なのかが判然とはしません。
しかし、大まかな傾向はあって、まず存在しないのが、「銅→高域が伸びる」という因果関係です。(これは銀の場合によく見られるウリ文句です)。で、2つに別れていて「銅→ウォーム(低音が出る)」派と「銅→まんべんなくクリア」派が存在するようです。
しかし、後者についてはこれは要は銅線がケーブルの基本であり、かつ、おそらく純度→クリアというような因果関係ではないかと思います。また、ウォームというのも結局は相対的なものですから、銀→高音/銅→低音 の対比(あくまで相対的な違い)が見えてくる、という程度の話に感じられます。
AKG CN120-2.5E
高純度OFC採用により、高解像度再生を実現
純度の問題なのか、OFCなのか曖昧ですが、組み合わさると高解像度が特徴ということを天下のAKGが言ってくれています。
NOBUNAGA Labs HYBRID SERIES
線材に伝送ロスを抑え、クリアでレンジの広い特性の7N-OCC線
NOBUNAGA Labs ほのか
自然で滑らかな響きを実現するOFC線
1芯あたり0.08mmのOFC線を19本使用。伝送ロスを抑えケーブル本来の能力を発揮します。電気伝導性に優れたOFC線は、低域から高域まで非常にバランス良く、自然で癖のないサウンドを実現します。
NOBUNAGA LabsはOFCについては、ワイドレンジ、自然、と言った言葉を割当ててますので、あくまで銅はベースラインという感じですかね。
Beat Audio Vermilion MKII 8-Wire
私たちが手掛けた最初のVermilionは、銅導体ゆえの温かみのあるサウンドと美しい朱色が多くの人を惹きつけ、
Vermilion MKII 8-Wire(Beat Audio)|ミックスウェーブ[Mixwave] イヤホン・ヘッドホンケーブル8導体単結晶銅ベースの合金導体
Beat Audioは銅=ウォーム(温かみ)=低音がある派です。金については下でとりあげたように、使ったからと言っていい音になるようなものではないということを明言しているメーカーなので、この断言は面白いとメーカーからすればそれなりに確信があってのものに感じられます。
ThieAudio Legacy3 付属カスタム7N8コア銅ケーブル
Legacy3はカスタム7N8コア銅ケーブルが搭載されます。私たちは銅ケーブルを選択した理由は銅ケーブルで伝送された音が暖かくて明瞭です。
中国の新興メーカーThieAudioは銅→ウォーム派です。ちなみに、同価格帯のThieAudio Voyager3の方は銅銀ミックスケーブルを付属させているので、実際イヤホンに合わせたケーブルを付属させているという主張に一貫性があるとは言えます。
銀素材について
銀については、高域が伸びる・高解像度(そもそも高域が伸びるとキラキラが乗って、高解像度に感じられるという関係があります。)ということで、ほとんどコンセンサスがあるように思えます。(繰り返しになりますが、銅は基本的な素材なので「全域に渡って……」という場合と銀と比較して「低音が……」という評価になるか2種類に語られ方が分かれるということですね)
銀については、そもそも銀線として作られているケーブルと、銅線を銀でコートしているという2種がありますが、銀線についての記述のほうがはっきりと「高域」よりなものが多いです。
FINAL OFC silver coated cable
音場に広がりを与える高純度OFCシルバーコートケーブルは、信号の伝送速度を追求したスーパーコンピューター「京(kei)」用のケーブル開発、製造している事でも名高い潤工社との共同開発品です。
日本のオーディオマニア御用達イヤホンメーカー(いやヘッドホンも定評はありますが)Finalはそもそも意外にアップグレードケーブルが少なくて、8000円の、おそらく廉価なイヤホンの付属ケーブルと同等品のシリーズ(素材とかも書いてないですね)以外だと、この銀コートシリーズしかありません。
高純度OFCシルバーコート→音場が広がる
という関係で、何と何が対応しているのかは不明で、上にあげた銀の一般論ともずれますが、そもそも以下で紹介する銀ケーブルは銀船で、このfinalのケーブルは銀のコートなので、銀の性質を云々するのには向いていないのかもしれません。とはいえ、メジャーメーカーということで。
Effect Audio Studio"Thor Silver"
銀泉の特徴である解像度の高さも十二分に生かしスピーディーかつ迫力感のあるビートを奏でます。
銀→高解像度 派閥です。
ただし、これは海外の方の公式サイトにはありません。
Thor Silver II - Standard - Premium Series | Effect Audio
eイヤホンとか販売代理店なんかがコメントをつけてることがあり、それの引用かもしれません(明らかな誤字がありますし……)
SoundsGood SilverHorse Sereis
【国内正規品】 SoundsGood 2Pin端子用 4.4mm バランスプラグ 純銀撚り線 銀コートOCC イヤホンケーブル SilverHorse SH-T4B [2Pin-4.4mm]
- 発売日: 2020/01/30
- メディア: エレクトロニクス
2 つの異なる線材を合わせることにより高解像度で純銀ケーブルの特徴である華やかさを保ちつつ、中・低音域も引き締まったメリハリのあるサウンドを提供します。
銀=華やかさ
(おそらく)銀コートOCC→中・低音域も引き締まった
という割当だろうと思います。一般論と矛盾はしないですね(そんなに都合よくいいとこどりに本当に混ぜ合わせることでなるかというと、本当か?という感じもしますけども……)
NOBUNAGA Labs SUPREME 篝火(かがりび)
音の立ち上がりが速く、繊細で表現豊かな再現力を可能にする
4N純銀線に金メッキ加工を施し解像度の高い明瞭な高域を保ちながら
バランスの取れた自然で躍動感ある中低域を実現します
銀→音の立ち上がりが速い/繊細
NOBUNAGA Labs silver series
鮮明で深みのある響きを実現する4N純銀線
WiseTech :: NOBUNAGA Labs
銀→鮮明・響きの深み
NOBUNAGA Labs HYBRID SERIES
鮮やかで伸びのある高域と解像度の向上を可能にする純銀線
銀線→鮮やか・高域/高解像度
NOBUNAGA LABS内では上の通り一貫して、銀線→鮮やか・高域・高解像度(ほとんど同じかなと思います。高域が強めに出やすいのかなと)ということですね。
金素材について
Beat Audio Billow
この金という素材を無作為に扱ったところでは良い結果(良い音)は得られないと考えます。そもそも「金」という素材そのものは優れた導電性を持ちません。
Billow(Beat Audio)|ミックスウェーブ[Mixwave] イヤホン・ヘッドホンケーブル4導体、8導体金ベースの合金導体
価格が高すぎるので、金線のケーブルというものはほとんど見つけられませんでしたが(昔トリビアの泉で見た記憶によれば、オリンピックの金メダルも銀の金メッキらしいぐらいですからね……)、混ぜ合わせた中に金もあります、というケーブルはこれを見つけることが出来ましたが、あくまて素材の一つということのようです。
純度一般について
Beat Audio
Beat Audioが掲げている企業理念「Purity is not everything, Music is everything.(純度がすべてではない。音楽がすべて。)」には、「ケーブルの品質を導体の純度だけで評価してはいけない。そのケーブルによって奏でられる音楽によって評価されるべき。」という、強いメッセージが込められています
Emerald MKII 8-Wire LC(Beat Audio)|ミックスウェーブ[Mixwave] 限定モデルイヤホンケーブル8導体銀メッキ銅合金導体
Beat Audioは丁寧にポリシーを説明してくれているので、あらゆる項目で登場していますが、全てのケーブルにこういう説明が書かれていて、純度主義に対して警鐘を鳴らしています。
ただし、音質でTPCと比較した場合、わずかな純度の差と音との関係は決して定量的に論証されてはおらず、最近では従来の常識に対して批判が投げかけられている[4][5]。
最初でも取り上げましたが、WikipediaのOFCの説明では上記のように(TPCというのは3Nレベルの純度の銅です)、疑いが持たれているという話が出ていますね。5Nでも8Nでも差はさほどないのかもしれません。個人的にも、単に高価・高品質な材質を使っています、というぐらいに捉えています。
芯の数について
芯の数については、中華ケーブルが4芯、8芯、16芯とスペックを競っているところがあるのですが、これはまだあんまり明確な関係について宣言したメーカーを見つけられていません。
個人的には芯が多いほうがよれにくいので、値段に大きな差がなければ16芯ぐらいあってくれると嬉しいなあという感じはあるのですが(というか太いケーブルのほうが個人的に好きなので)、その程度といえばその程度です。
NOBUNAGA Labs
また、1芯あたり35本の8芯構成にすることで、定位感と情報量を高め
微細な音の変化や自然な余韻の響きまでも表現します
8芯構成により定位感と情報量を飛躍的に向上
SONY MUC-M12SB1
KIMBER KABLE(R)社との協力によって開発された8芯Braid(編み)構造を採用
KIMBER KABLE(R)社の協力のもとでBraid構造(8本)を持つデザインを採用しました。Braid構造は外部ノイズを遮断し、ワイヤー間の相互作用に伴うオーディオ信号の劣化を最小限に抑制。ノイズのレベルを下げるとともにケーブルの持つ電気的特性を最適化することで、原音の持つ音の透明感や音楽性をあますところなく再現します。
SONYというよりはKIMBERの受け売りっぽいですし、芯の数そのものが何かと比例するとは言っていないですが、編みの構造によって「音の透明感や音楽性」の「再現」性があがる、ということは言われているようですね。
PVC 加工について
ここでいう加工は、ケーブルの外の被膜、要はあのゴムだったりプラスチック加工だったりする部分について言っています。
FINAL OFC silver coated cable
絶縁被膜には潤工社がジュンフロンブランドで多大のノウハウを持ち、最も誘電率の低い素材である素材PFAフッ素ポリマーを使用。外被には、柔軟性を高めるためにPVCを採用。
ALO audio Litz Wire Earphone Cable
劣化に強い医療グレードのPVCジャケットを使用しており、酸化などから導体を保護します。
Litz Wire Earphone Cable(ALO audio)|ミックスウェーブ[Mixwave] イヤホンケーブル4導体銀メッキ銅導体
ORTA Silver Plated Cable
PVC 被膜を施した線材を丁寧に編み込みことで、よりしなやかな取り回しと高い耐久性を確保。
LABKABLEとの協業というかoemというかだったんですね。一時期単品で売られていたので結構お得だなとは思ってましたが、ケーブル専業メーカーがやっていたならなんとなく納得もいきますね(今は品切れていた気がしますが)
PVCと「丁寧に編み込む」の2つがありますが、「しなやか」と「高い耐久性」につながるとされています。
リッツ構造
ALO AUDIOが結構謳っているのですが、メリットを宣言してはいません。
事務所が解散してしまったモガミ電線のHPに説明がありました(リッツ構造についてどうも疑義的なようですが)
古くから、中波ラジオのバーアンテナのコイルとか、 中間周波トランス等の巻線として使われてきたのが「リッツ線」(Litz wire)で、 これは、 絶縁された複数の細い導体素線を集めて撚合わせたものです。
Litz Wire の語源はドイツ語の「Litzendraht」(編組線)だそうです。
基本的にN芯構造と言われるものと同じと把握していますが、さて……
FEP加工について
ALO audio以外だとNORDOSTのページ(https://www.electori.co.jp/nordost/)ぐらいでしか確認できなかったのですが、Fluorinated Ethylene Propylene加工の略だそうです。
ALO audio SXC 8 Headphone Cable
シース(Jacket)には、PVCやPE製のシースよりも遥かに優れた「FEP(テフロン)」を採用。「FEP(テフロン)」は、耐熱性、非粘着性、耐薬品性、低摩擦性、絶縁性など、幾つもの優れた性質を兼ね備えつつも、その美しい形状は保たれ、それは捻じれにくく曲げやすいという圧倒的なパフォーマンスを備えます。
SXC 8 Headphone Cable(ALO audio)|ミックスウェーブ[Mixwave] ヘッドホンケーブル8導体高純度銀メッキ銅導体
補遺:メッキ違い聴き比べセット
e☆イヤホン / NLE-PLT1-SET(メッキ違い聴き比べセット)
面白い。疑り深い人は一度こういうものを買ってみろという自信があるわけですね。今回材質の話は線の材質中心でまとめましたが、メッキについても聴き比べられるぐらい違うというのがNOBUNAGA Labsのスタンスということですね。
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