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無知のヴェールとは何か? 

記事要旨

無知のヴェールとは、正義とか法についてどのように決めるのがいいか?という政治哲学者ロールズからの提案なのだが、哲学って何の役に立つの?という問い全般に対して、「客観的な答えが出せないが議論が必要なこと、について考えるための道具を考案しているのだ」ということの例として、普通の人でもなるほどと思いやすい1例であると思うので、特別正義について興味のない人でも知る価値のある言葉だと思う。

「正義」「何が正しいか?」「(政府などが方針としてもつべき)善とは?」については、出来るだけ多くの人が幸せであるようにすべき、という大まかな空気はあるのだが、一方で、平等も必要であるという議論もあり、時に矛盾する(特定で少数のすごく困っている人(めっちゃお金がかかる難病にかかっている人)を無視したほうが、望まれている政策を多くの人に安く届けられるとか)。

そこでロールズは、(すでに社会に生きてる人間が、ルールを決めようとするとポジショントークになり、金持ちは金持ちに有利なように、健康な人は健康な人に有利なルールがいいと感じられるのは避けられないので)(ルール作りの段階では)自分が貧乏になるのか金持ちになるのか、やたら健康に生まれるのか、病気がちに生まれるのか、そういうことがわかっていない状態(=「無知」)でも同意出来るようなルールを良いルールとしよう、と提案した。

プロ(少なくとも、素性のしれないブロガーよりは)による要約

このブログにたどり着いた人は、「無知のヴェール」という単語を知る程度には、この分野について知識がありますし、多分、素人のふわっとした解説より専門家の文章が読みたいでしょう。ただ、日本語WEBには全然なかった。申し訳ない。一応、読みやすいリンクから、そこだけ抜き出してわかるものを2つ見つけておいた。

 

サンデル教授が主張する“これからの正義”とは何だったのか 【西垣通氏×武田隆氏対談2】|識者に聞く ソーシャルメディア進化論|ダイヤモンド・オンライン

武田リベラリストロールズは、「無知のベール」という考え方を提案しています。

西垣 人々が全員、自分がどういう存在か知らない「無知のベール」をかぶり、その上で公共のルールを考えたらどうなるか、という思考実験ですね。そのベールをかぶると、自分の宗教も、社会的地位も、職業も、学歴も、財産も、性別や体調、皮膚の色さえもわからなくなる。

武田 ベールを脱いだときに、自分は一番弱い少数派になっているかもしれない。だから、もっとも弱い人が尊重されるルールが選ばれるはずだというわけですね。

西垣 この「無知のベール」というのは、天才的なアイデアだと思います。しかしサンデル氏は、

サンデルはロールズの批判者なので、このあとそういう話になります。詳しくはリンク先で。サンデルは政治哲学の世界では一応保守寄りということになっています。

『ある正義の理論』の世界

 その世界

道徳哲学者のジョン・ロールスが、面白い頭の体操を考案している。ちょっと、未来社会のすべてのルールをつくる委員会のメンバーになったと想像してごらん。(略)委員会はなにからなにまで考えるんだ。そして委員会が合意して、ルールにサインしたとたん、きみたちは死ぬ。(略)でもすぐに、きみたちがつくったルールで動いている社会に生まれ変わる。でもその社会のどこに生まれるか、つまりどんな社会的立場に立つかわからないというのが、この頭の体操のミソなんだ。(略)そういうのが公平な社会だろう。誰もが平等なあつかいを約束されているのだから。(略)ロールスの頭の体操では、誰も男に生まれるか女に生まれるかわからないのだからね。確立が五分五分なら、社会は男性にも女性にも魅力的なようにつくられるだろう[9]

これは慶応大学の授業のプリントっぽいものに引用されている、『ソフィーの世界』からの引用です。『ソフィーの世界』は、哲学読み物というか、物語調で歴史上の有名な哲学のことがわかるという素晴らしい本です

 

 

 そもそも、社会契約という概念が分かってたほうがいいが、実はそれは社会の授業で習ったアレです

 

Leviathan by Thomas Hobbes.jpg
By 不明 - https://www.loc.gov/exhibits/world/world-object.html http://www.securityfocus.com/images/columnists/leviathan-large.jpg, パブリック・ドメイン, Link

 「万人の万人に対する自然状態」とかそういうやつだ、覚えているだろうか? 

ja.wikipedia.org

 

何かものごと、しかも人がたくさん関わっているようなことについて、問題を解決するには、だいたい関わってる人が何をどうしたいか、というのを整理しないと始まらない。(トラブルが終わったあとは三方良しにしないと、問題は再発してしまうので解決とは言えない。トラブル解決について、警察が出てきてバツを与えるというモデルを採っている人もいるかもしれないが、あれは調整がうまくいかないときの最終手段である)

ただ、善悪、社会全体の善悪というどでかいものを考える時には、うまく状況を抽象化しないといけないのだが、そこで、社会の始まりについてのストーリーを考えるというやり方がある。政府や法律とかない時代があったのが、なぜ今は政府や法律とかがあるのか?という問に変換している訳だ。そこには、法律も政府もない社会に住んでいる人たちが登場する

そういう思考実験の延長として「無知のヴェール」はある、と思うと、学校で習ったことがずっと哲学として現代まで続いている、という感じがわかるのではないか。

 

英語Wikipediaによれば、ロールズの専売特許ではないらしい

Veil of ignorance - Wikipedia

ミルやカント、アダム・スミスも概念としては持っていて

全然オフィシャルなリソースがない……

Original Position (Stanford Encyclopedia of Philosophy)

↑一番下のやつがスタンフォード大学の哲学辞典なのでマシだが、ロールズの著書の説明という形になってしまっている

 

 

 

正義論

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